一難去って

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ひと目でわかるほど、浮かれた顔してたんだろうか。 自分ではそんなに表情豊かな方じゃないと思ってたんだけど、亨さんも田中も俺のことをわかりやすいという。 これは二人が特別鋭いというより、俺が素直に馬鹿すぎる気がする。 小さな子供じゃないんだから、周囲にそんなにアピールしてどうするよ。 「俺に突っ込まれたからって、急に眉間に皺作らなくてもいいじゃん」 と田中が笑ってデコピンするということは、またしても考えてること全部バレてるんだな。 もう、どんだけ駄々漏れなんだ、俺。 「いいから、いいから。それが佑斗のイイトコなんだし。で、何があったって?」 俺は田中に、亨さんが倒れたこと、先輩がお粥を作りに来てくれたことを、掻い摘んで説明した。 「マジか。あの先輩、やるな。アピールすげぇじゃん」 まずそこか? 亨さんの具合を聞くとか、そういうのはないのかよ。 とちょっと思ったら田中はすかさず、 「おまえのその顔見たら、亨さんはさほど心配しなくてもよさそうだし」 そう付け加えた。 田中が鋭いんだか、俺がわかりやす過ぎるんだか。 いや、もう不毛な自問はやめておこう。 多分そのどっちもだ。
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