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「先輩って、亨さん狙ってるよな。亨さんはどうなんだ? まんざらでもなさそうな感じ?」
少しだけ言いにくそうに、でも明らかに興味津々で田中が言う。
やっぱり、普通はそう取るよな。
数時間前なら俺もきっとそう思った。
でも今はもう、ちゃんとわかってる。
亨さんを少しでも疑うようなことは、もうしない。
「さぁ。本人に聞けば?」
俺がさらっと流したら田中もしつこく食い下がったりはせず、さっさと話題を変えた。
「んで、なんでそれが嬉しいわけ? ニコニコしちゃって」
田中が俺の頬を摘もうとするので、俺は仰け反ってそれを避けた。
「大好きな亨さんが倒れたんなら、おまえもっと悲壮な顔してそうなのに」
大好きな、と言われて一瞬びくりと肩が跳ねてしまった。
多分田中は気がついてない。
そういう意味で言ったんじゃないとわかっていても、ストレートに言われるとちょっと照れる。
「え、まさかおまえ、ひょっとして先輩のことを? 家に来てくれたから、それで喜んでんのか?!」
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