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思いがけず強い口調で遮られ、俺は思わず肩を揺らした。
田中が俺に声を荒げるなんて、初めてだ。
眉をキッと吊り上げ、口をへの字に曲げて怒りを隠そうともしていない。
俺は何か、知らずに田中の気に障るようなことを言っただろうか。
「ごめん」
「謝るな!」
反射的に謝ったら更に怒鳴られ、俺はまともに田中の顔が見られない。
「ごめんなんて言うなよ、おまえは何も悪くなんてないだろ。・・・俺は今、猛烈に腹が立ってるんだ。おまえにじゃない、俺自身にだ」
え?
何故田中が、自分に腹を立てるんだ?
「要はその、えーっと、こんな言葉を本人目の前に使っていいのかわかんねぇけど、つまりは児童に対する性的虐待ってことだ。おまえはそれを受けてた、そうだろ?」
俺は少し迷って、そして頷いた。
本当は亨さん以外の誰にも、打ち明けるつもりはなかったけど。
そんな直截な言葉で確認されたら、口先だけのごまかしなんて出来やしない。
頭のいい田中が一度勘ぐりだしたら、土台嘘を突き通せるはずなんてないんだ。
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