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「けどまぁ、そういうことじゃ、しょうがないな」
田中が唐突にそう言うから、何がしょうがないんだろうかと、俺は一瞬本気で考えた。
そうか、さっき抱きつかれて思い切り拒絶したことか、と思い出すのに3秒くらい掛かってしまった。
駄目だ俺、この話をすると周りのこととか前後のことが全部頭から飛んでしまう。
やっぱりまだそれだけ、俺の中では大きな存在なんだ。
早く無視できるほどささいなことに、或いは笑い飛ばせるようなどうでもいい昔話にしたいんだけど。
そう簡単にはいかないことも、よくわかってる。
「じゃあ俺、おまえがトラウマ克服するまで、気長に待つよ。俺も一緒に手伝ってやるから。頑張ろうぜ」
は?
待つ?
待つって、何を?
意味がわからない。
田中は一体、何の話をしてるんだ?
「おまえの話だと、亨さんはその苦手な対象にドンピシャリじゃないか? 立場だって義理の父親っていう、ピンポイントでそのものズバリだし」
「あ、ああ。まぁそうなんだけど、でも亨さんは」
「だろ? 大丈夫なんだろ?」
俺の言葉を遮って、田中が得意気に続ける。
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