一難去って

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まだ心臓がドキドキしてる。 思い出しただけでこれだ。 平常心、平常心と、自分で自分に言い聞かせる。 どんだけ亨さんが好きなんだ、俺。 エレベーターのドアが開くのを待つ間、俺は胸をとんとんと叩いて自分を落ち着かせようとしたけれど、乗り込んで、上の階まで上がって、部屋の前まで来ても、まだ動悸は少しも収まっていなかった。 ドアの前で、俺は大きく深呼吸をした。 二十歳になるまで、亨さんが待つと言ってくれるなら俺も待つ。 果てしなく待ち遠しいけど、耐えてみせる。 急がなくてもいい、時間はまだたっぷりある。 今日は朝まで、亨さんの隣にいよう。 傍にいるだけでいい、他に何もなくていい。 離れているから、余計なことを考えて不安になる。 一緒にいて、触れていれば怖いことなんて何もない。 だって俺は、こんなにも亨さんのことが好きなんだから。 さぁ、ドアを開けよう。 まだ話したいことは、たくさんあるんだ。 (第二話・了)
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