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「菱姐(リンジエ)、どうもありがとうございます」
質屋から買い戻した耳飾りを確かめると、後輩二人は頭を下げた。
「いいのよ、このくらい」
あまりにも畏まった二人の姿に、昔、家に居た女中たちを思い出し、何とはなしに苦笑いする。
沈みかけた船から逃げ出す鼠さながら、鄭家を次々去って行ったあの女中たちも、今頃はまた別の女主人に平伏しているのかもしれない。
「そんな安物、私にはどうってことないわ」
金剛石(ダイヤモンド)だの、翠玉(エメラルド)だの、西洋の石は、どれもこれも目を刺すような、俗悪な輝きのものばかりだ。
お母様やお祖母様が髪や耳に着けていらした翡翠や白玉の奥ゆかしさなど、こんな石ころに求むべくもない。
だが、欧米かぶれしたこの街で最ももてはやされるのは、そんな卑俗な飾りなのだ。
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