浮草の女

3/4
前へ
/16ページ
次へ
全てを失って上海に流れ着いた私は、元は女中や百姓をしていた様な娘たちに混ざって、舞女(ダンサー)をしている。 北平の妓院に行って「鄭家の娘が妓女にまで身を落とした」と笑い者になるより、縁もゆかりもない土地で素性を隠して身過ぎ世過ぎした方がまだましだ。 鄭という姓自体は珍しくもないから、私さえ黙っていれば、上海ではありふれた商売女ということでいちいち身の上を詮索する人もいない。 そう自分に言い訳してはいるが、妓女も舞女も稼業としては五十歩百歩だろう。 というより、一応は昔ながらの芸を売るのが建前の北京の芸妓より、人前でこんなスリットの大きく入った旗袍(チャイナドレス)を着て見ず知らずの男と体を合わせて踊る上海の舞女の方がよほど破廉恥だ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加