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――誇り高い鄭家の娘が!
冥府のお父様お母様はそう嘆くかもしれない。
最期まで仕えてくれたじいやにしても、こんな姿を見たらやり切れないだろう。
だが、男でない私には、もう自分の「女」を武器にするよりほかに、生きる術がない。
あの雪の日、鄭家の旗は、お父様の書斎に残して出てきた。
私には継ぐ資格がないからだ。
風の便りでは、あの旗は北平に入城し、屋敷に移り住んだ軍閥の将軍に焼き払われたそうだ。
名実共に、鄭家は滅びた。
次々と新しい勢力が生まれて争う時世では、別に珍しくもない話だ。
庭池に置いてきたあの番の鯉も、あるいは生け作りにでもされて、馬賊上がりの将軍の食膳に上せられてしまったのかもしれない。
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