遠方より来たる

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「これが、今度、北平から迎える客だ」 総経理が一葉の写真を差し出す。 どこから入手したのか知らないが、この人は必要な情報はいつも掌握している。 「羅振連(ルオ・チェンリエン)。字(あざな)は再榮(ツァイロン)。遺臣の羅家の跡取りで、英国(イギリス)帰りだそうだ」 枯葉色の写真には、背広を着て、額を出して黒髪を撫で付け、縁の細い眼鏡を掛けた若い男が写っている。 白い面長の顔に、濃く長い眉、切れの長い目。 お父様の書斎に飾られていた写真で、若い頃のお父様と並んで一緒に映っていた、羅家のおじ様にそっくりだ。 違うとすれば、この男が辮髪に長衣を纏った姿ではなく、西洋人を真似た装いをしていることくらいだろう。
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