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「今度の客は、老大(ボス)も直々にお会いになるかもしれない」
だとすると、写真の男は、ずいぶん、偉くなったものだ。
総経理はカチャリとライターで煙草に火を点けると、ゆっくり紫煙を吐き出した。
「まだ三十前だから、若い男だな」
私より三歳上なら、二十九歳のはずだ。
「知り合いか?」
流れてくる煙に混じって、いぶかしげな声がこちらに届く。
「いえ」
私は写真に目を注いだまま、笑いがこみ上げるのを感じた。
胸の奥で、置き忘れてきた我が家の旗が燃え上がる。
雲一つない青空の下、朱色の炎に包まれながら。
「初めてお会いする方ですわ」(了)
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