第十四章 歌って踊れる傭兵アイドル

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3 傭兵の村の生き残り。 バニグラの護衛を強要されていた一人であるエリシアは『ラグナロク』との戦争で足を負傷した。 治癒魔法で治すのもいいのだが、あまりそういうことを続けていると『身体』に不具合が出てくる(同一の薬を不適切に摂取することでその薬が効かなくなるようなものか)。 そんなわけでエリシアの足はある程度治し、後は自然治癒に任せることになった。 「エリシア、具合はどう?」 「だいじょーぶだって。フィナってば心配性だぞー」 ベッドで横になるエリシアの見舞いに来たフィナが近くの椅子に腰かける。 そんな彼女へ元傭兵現騎士のエリシアはこう問いかけた。 「フィナ、大活躍だったらしいじゃん。第零騎士団を圧倒してた傭兵を撃破するとかMVPものだよー」 「そんなことないですよ。まだまだこんなんじゃ皆を守れないんです」 その様子を見て。 エリシアは複雑な色の息を吐く。 「フィナは『守ること』に固執し過ぎてるし、アリスは『争わないこと』に固執しちゃってるし、プチナのなんてあんなの『豹変』以外の何物でもないよねー」 「ですね」 「それが分かってて『そうする』なら何も言わないけどさ」 バニグラの障害の排除。 『獣人を産み出す』実験。 過去は少女たちを変えた。 いくらバニグラの支配が打ち砕かれたとしても、過去は変わらない。 だから、だろうか。 プチナのような負の方向の『豹変』をする者もいれば、『彼女』のように正(?)の方向に『豹変』する者も現れた。 ーーー☆ーーー 『彼女』は大通りの広場にいた。 フィナたちと同じくバニグラの護衛を強要させられていた少女がキラキラした衣装を纏い、声量増幅魔法でこう叫んだ。 「みんなーっ!! 今日はリュミエールちゃんのコンサートに来てくれてありがっとーっ!!」 ステージは広場。 観客は復興作業中の人たち。 料金などいらない。 『アイドル』は笑顔を届けるのが仕事なのだから。 だから彼女は歌うのだ。 戦争により荒んだ人々の心を癒すために。
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