第十四章 歌って踊れる傭兵アイドル

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ーーー☆ーーー 街に出て復興作業を手伝っていたジンスケは『騒いでいる奴がいる』と住民から苦情を受けた。 現場に行ってみると、何やらきゃぴきゃぴとした女の子が『ここの世界観どうなってんだ?』と今更な疑問を持つほど現代のアイドルらしい歌を歌っていた。 ……とてつもなく音痴だし、ロボットダンスに見間違うくらいぎこちなかったが。 それでも一曲歌いきった。 と、二曲目に入りそうな流れだったので急いで止めることに。 「おい待てって! えーっと、確かフィナたちと一緒にいた傭兵のリュミエールだったよな」 フィナたちと違い、騎士にはならなかったらしい。聞いた話だと『アイドルは誰のものにもならないんだよっ』とか言ってたとか。 だからある程度予想していた。というか一言二言くらいは話したことがあるが、前はこんなんじゃなかったような? 「あ、ジークフリート! なになに? 歌って踊れる傭兵アイドルリュミエールちゃんと握手してほしいのかなー?」 「歌って、踊れる……?」 いや、確かに歌ってたし踊っていた。でも、あれでそう自称するのは無理がないだろうか? 「なんでもいいや。ほら、邪魔になるから歌と踊りはやめとけって」 「むっ。私は元気がない人々に元気を与えるのよっ。だってアイドルだからね☆」 「そ、そうか……」 いや、周りの人たちはうんざりしきっているのだが、とまでは言えなかった。 善意でやっていることが分かるほどキラキラした目を向けられては無下にもできない。 しかし、復興作業で荒んだ人々には余裕がないのも事実。彼女を好きにさせていると面倒なことになるだろう。 「じゃあ、なんだ。えっと、だな……そうそうっ。どうせならきちんとした場を設けてパーッとやろうぜ! そっちのほうが効率的だろ?」 「私はどこでだって歌いますよっ」 「んぐっ。……ああそうそうっ。その歌をより多くの人に聞かせたいんだって! うんうん!!」 「そういうことなら……」 「ようしそれじゃあ今後のことを話し合おうそうしようさあ行くぞ!!」 「あ、ちょっ……!」 そんなわけで自称傭兵アイドルちゃんの手を取りその場を離れることに。 また面倒なことになったが、まあ戦争だの世界滅亡を企てる高位の存在に開花した人間だのに頭を悩ませるよりはマシだろう。
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