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机の影に身を潜める松原。 それに習い、体を隠す。 漆黒と沈黙。 本能的な恐怖がこみ上げてくる。 高まる緊張をなだめるように、松原は穏やかな口調で話し始めた。 「さて、一応最低限のことだけ今は話すぜ。 まず、ここは俺たちの学校とよく似ているが、別の場所…別の世界なんだ。」 薄々感じていた事実。 確かに、教室の配置や景色は馴染みのある武島高校の校舎そのもの。 だけど、非現実的なことがここでは起きすぎている。 黒い化け物。 手から火が出る魔法。 そして、炎を弾く鎧をいとも簡単に崩す攻撃… さながら空想の世界のように。 「ここにはバグと呼ばれる敵がいる。それに捕まれば最期だ。 だけど、俺たちに何の手立てがないわけじゃ無い。」 バグ…あの黒い殺人機械。 心に刻み込まれた恐怖。 廊下に響く悲鳴。 流れる鮮血。 彷彿とする記憶に吐き気がこみ上げた。 「辛いかもしれないが聞いてくれ。ここからが一番重要なんだ。 バグに対抗するために俺たちには力が与えられているのさ。 スマートフォンを開いてメールを見てくれ。」 言葉を紡ぐ松原の顔に必死さが見える。 バグに対抗する力? 一体何の話だろうか。 訳もわからずスマホの画面を付け、ロックを解除した。 開かれる見慣れた画面。 導かれるようにメールの欄をタッチした。 並ぶメールの群。 上の方は全て同じアドレスからだ。 ただ、一つだけ未開封のメールがあった。 そっと、そこに指を重ねた。
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