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「もういい、逃げるのも興醒めだ。
貴様らの実力は分かった。
『あれ』でもう終わらせる。」
剣の鋒が夜空へと向けられる。
満月を穿つ白銀の刃。
月光を浴び、旭の様に煌めく。
「そうはさせない!」
白髪の彼へ一人強行する着物の少年。
一瞬にして距離を詰め、腰元の刀を引き抜く。
交わる刃。
二人の合間に火花が散り、甲高い金属音が戦場に木霊する。
空気を激しく揺らす衝撃波。
「邪魔をするな!センジ!」
怒号を上げる白髪の少年。
振り下ろされる狂気の刃。
刀の先が、肉を捉えた。
噴き出す血潮。
柄の着物が紅蓮に侵食されていく。
地上から、彼の名が叫ばれる。
崩れ去る着物の少年。
軍配は、白髪の彼に上がったかに見えた…
たちまち光の粒子へと姿を変える着物。
いや、着物だけではない。少年の身体そのものが粒子となって彼へ纏わりつく。
動揺する少年。
あり得ない。斬った物は人間。
本来なら、そのまま落下していくはず。
「これは…分身…!?」
勘づくのと同時に、一筋の刃が白髪の少年の胸を貫いた。
これは、これから続く15年前の呪いの始まりでもあった。
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