その能力『絶対絶命』につき

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「気づいたようだな、俺の能力の本質を… 俺の能力の第二の効果、『絶命』。 斬った対象を概念的に殺す剣を創ることができる!もちろん、俺には無害だ!」 高らかに勝利を謳う武崎。 不吉な予想は当たってしまった。 一つ目の能力でも十分強大だというのに… 武崎は何を思ったか剣で空を斬りはじめた。 するとみるみる内に空気が淀んでいく。 息が苦しい… 吸っても吸っても肺が機能していないみたいだ。 『空気』が死んでいるのか… 「お前ら全員窒息してしまえ!」 吠える武崎。 怒り狂った野獣のようだ。 どうにかしなければ皆んな死ぬ… もう一度、非現実的創造(ノンリアリティ・クリエイト)を試みる。 だが、直後に激しい頭痛が我が身を襲った。 想像力の限界。まるで、頭がひび割れるかのような苦痛。 吐き気と目眩がこれ以上の創造に警鐘を鳴らす。 このままでは駄目なんだ。 このままではいつもと同じなんだ。 思い描いてばかりで、何もできなかった、『平凡』な自分と… しかし、残された時間はあと僅か… 俺がどうにかしなければならないのに… 刹那、背後から電子音が聞こえた。 「能力起動(アビリティ・オン)」 同時に緩和される体の不調。 さながら、雲の上に浮いているかのように頭の中身が軽い。 一体誰が…? 「お前にはお前にしかできないことがある。早くやっちまえって。俺が全力でサポートするからさ。」 振り返ると、笑顔の松原が立っている。 確か、あいつの能力には才能を底上げする効果があったっけ。 それを使って俺の想像力を引き上げたのか! 親指を立てる松原。 それは信頼の証。 そうだ、もう自分は一人ではない。 皆んながついている。死んでいったクラスメイト、かけがえの無い友、そして団結した仲間。 背負うのではなく、助け合い、共に戦う。 この瞬間、絶対絶命が、絶好の好機に変わった。 よし、存分に想像してやる。 全身全霊をかけて、奴を倒してやるんだ。 風の流れを創造し、竜巻を創り上げた。
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