その能力『絶対絶命』につき

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唸る竜巻が天を廻る。 竜巻は空気を新鮮なものに入れかえ、爽やかな新風が体を巡った。 「非現実的想像(ノンリアリティ・クリエイト)!」 そのまま風をまとめ上げ、大きな龍を顕現させる。 暴風の龍。 それは正に圧巻の姿。 「これで、終わりだ!」 龍を四体に分裂させると武崎に突進させた。 怒涛の進撃。 悪魔の顔に焦りが見え始める。 「この程度、俺の能力で殺してやる!」 殺人鬼は必死で剣を振り回す。 しかし次々と四方八方から襲いかかる風龍の猛撃の全てを止めることなどできない。 風が奴をすくい上げる。 武崎は突風に煽られ、剣が手から離れた。 「クソォォォォォォォ!」 宙を舞う奴の体。 その咆哮さえも暴風は吹き飛ばしてしまう。 武崎は校舎に激突し、地上へと落下した。 ポケットから吹き飛ばされ、数メートル離れた場所に落ちる奴のスマートフォン。 やった、武崎の『絶命』に打ち勝てた。 けれどまだ倒せてはいない。 ここからなんとかしないと。 「俺のスマホ…」 武崎はよろめきながら奴の携帯に這って近づいていく。 「あいつにあれを取らせるな!」 長道が声を張り上げる。 あの機器に何かあるというのか? 考える暇はない。 奴がそれを求めているのなら、今はスマートフォンを渡すわけにはいかない。 手を蛇のように伸ばす悪魔。 少しでも迷えばまた主のもとへ携帯は還る。 「分かってるさ。」 「能力起動(アビリティ・オン)」 瞬間移動で飛び、スマホを手にする飛騨。 充血した目を見開く武崎。 しかし、次の瞬間、彼の携帯は空気のように姿を晦ました。 「クソ野郎が、返しやがれ。」 武崎は怨嗟の声を張り上げ、大きく腕を振るが、ただただ虚空を空ぶるだけ。 奴の能力は発動していない。 「やっぱり発動しないな。スマートフォンがなければ。 残念ながらお前の大事なぶつは今北海道にある。もう帰ってこないが。」 飛騨は目下の殺人魔に言いはなった。
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