その能力『絶対絶命』につき

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一同の決定により、武崎を体育館に幽閉することになった。 殺すという案も出たが、それなら奴とやっていることと同類だと否決されたのだ。 体育館を選んだのは、単にあまり人が寄らない場所という理由からである。 これから、かつての殺人鬼はここに一人で過ごすことになる。 孤独の痛み、それが罰。 しかし武崎にとっては自由を拘束されることのほうが痛手かもしれない。 他の取り巻きは、別々に倉庫に監禁されている。 まとめて牢屋に入れるより安全だと飛騨が提唱したのだ。 鉄の檻を創造し、中に奴をぶち込む。 最初は抵抗していた武崎だったが、檻に入る頃には大人しくなった。 顔を下に向け、歯を食いしばっている。 「終わったな。」 飛騨が鍵を閉めつつ零す。 そうだ、もう誰も死ぬことはなくなった。 平和が訪れたんだ。 「あぁ、後は生き残るだけだ。」 「まぁ俺達なら余裕だろ。」 一同の顔に笑顔があふれた。 あの咲田ですら顔に笑みを浮かべている。 幸せの瞬間。 これで、死んでいった皆んなも報われた。 これからは、彼ら彼女らの分まで生きていこう。 お互い、助け合って。 「工藤、あなたのおかげだ。」 長道が言った。 確かに、スマホを吹き飛ばしたのは自分だ。 でも、皆んなが協力しなければ、あの悪逆のたちは倒せなかった。 それに、最大の貢献者といえばあいつだろう。 「俺より松原の方が活躍してたぜ。なぁ、松原。」 そう言いつつ松原の方を向く。 だが、自分の方ではなく、こちらの後ろに焦点が合っている松原。 どうかしたのだろうか? 不穏な空気。 嫌な予感が心の中より湧きでてくる。 「松原、一体どうし…」 「金谷、大丈夫か!」 体育館に響く松原の一声。 後ろを振り返る一同。 そこには目を疑う光景があった。 腹を黒い矢印で射抜かれた金谷。 その顔は苦悶に歪んでいる。 そんな莫迦な。 脅威は終わったはずなのに。 突き刺さっているこれはなんだ? 矢にしては太く、剣にしては細い… もしかすると、これは能力か、いや、武崎は能力をもう使えない。 誰なんだ、これをやったのは。
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