仲間

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この扉を開けていいのだろうか。 何か胸騒ぎがする。 禁忌の箱に手をかけている…そんな不安に心が淀む。 それは松原も同じようで、金属に手をかけたまま開けずじまいにいた。 このままここを離れるか? いや、そんな野暮な選択肢があるか。開けなければ、ここまで来た意味がない。 人が居ないなら居ないでいいでは無いか。 もしかすると、場所を何らかの理由で移動したのかもしれない。 その時はその時で、他の場所にまた出向けばいい。 兎に角、確認しないことには何も始まらない。 親友の肩に手を添える。 振り返る松原。 鼓舞するようにゆっくりと首を縦に振った。 遅れて友もゆっくりとうなづく。 意を決してか、扉を勢いよく右へスライドさせた。 『ガラガラ』 いつものように開く扉。 窓ガラスから淡い光が差し込んでいる。 1組の見慣れた風景。 しかし肝心の中が松原の体でよく見えない。 誰かいたのだろうか? そう聞こうとすると、倒れるように後ろに退く松原。 「なんだよこれ…」 その顔は青ざめ、ひどく動揺している。 嫌な予感… 想像したくはないなにか悪い予感がする… 「…?どうしたんだ!?」 固まっている松原を横によけ、クラスの中へ一歩踏み込んだ。 その瞬間、体を走り抜ける戦慄。 視界に広がる残酷な世界。 地獄という言葉はこれを表すことに使うのだろう。 壁の各所に血しぶきが飛び、机は色々なところにスクラップの様になって無造作に捨てられている。 そして、床に散らばるたくさん携帯やスマートフォン。 それらは血で真っ赤に彩られていた。
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