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「仕方ない。」
彼は腰に手をかけた。
ひやりとした鍔の感触が指先を舐める。
意を決し、刃を鞘から抜き出す少年。
その目には、覚悟があった。
側近に迫る光線の群。
彼は、舞を踊るように剣を振るう。全ての光は叩き落とされ、地面へと屈折する。その慣れた手捌きはまさに華麗な芸術である。
しかし、直後、少年は自らの犯した過ちに気づいた。
地面へ到達するや否や、爆音を上げる光弾。
これを放った少年は、この光に、起爆効果を付加していたのだ。
それも、ただの衝撃ではなく、地面と触れた場合にのみ爆発するように。
濛々と立ち上る土煙。
むせるような粉塵に包まれ、白髪の少年は追っ手を見失った。
この少年を始め、今や敵となった少年少女達は、かつて、幾度となく戦いを共にした仲間だった。このような戦術も、彼らが自然の内に身につけたもの。
これでは、白髪の少年は、敵の姿を目視出来ない。
多勢に無勢。
囲まれれば、それ程厄介な事は無い。
それに…
突如、上空から迫り来る、一つの影。
彼の命を狙わんと、急降下を狙う。
死角からの急襲。
何処から敵が来るか分からぬ相手に、これは、一撃決殺の技だ。
勝負は、少年少女達が明らかに有利である。
けれど、彼もまた、百戦錬磨の戦士。
飛来する脅威に気づく事は、そう難しい事ではない。
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