プロローグ

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天を仰ぐ少年。 直ぐに迎撃の姿勢をとる。 奇襲は死角から攻めるから意味がある。 奇襲の利は発見された時点でもう消失した。 転じて今有利なのはむしろ白髪の彼であろう。 彼の手には、妖しく煌る一振りの刀。 対して、上から飛び降りた少年の手には、何も握られてはいない。 武器を持つもの、持たない者の差は一目瞭然。 しかし、それは、「通常の人間」同士の戦いの話ではある。 「能力起動(アビリティ・オン)」 上の少年の胸から電子音が鳴る。と同時に、手元に現る一対の武具。身の丈以上あろうかという槍に、体を隠しきれる程巨大な盾。 そう、彼らは能力を持つ者達。 魂に刻まれた能力という道具を使い、これまで死闘を繰り広げてきた。 「俺はお前を許さない。ここで、殺す!」 雄叫びを上げる槍の少年。 その眼は、紅い復讐の色、そして黒い悔恨の色に染まっている。 そう、何を隠そうこの白髪の少年、彼は、他の同胞達を皆殺しにしたのだ。 これは、避けては通れぬ戦い。 彼らが仲間の恨みを晴らすのか、はたまた白髪の「彼」が逃げ切るのか。 断ち切れぬ、憎しみの連鎖。 その終止符を彼らはここで打つつもりなのだ。
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