プロローグ

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「満月を上げた! やるなら今だ!」 着物の少年は、側の銀髪に指示を出す。 頷く少年。 指先を天に向け、満月を双眸に映す。 「巨大蒼月(スーパームーン)迫波(オーラ・レイ)月光閃(・ルナ)!!」 卒然、鮮烈な光を湛える母なる望月。 その明るさ、太陽の如く。 銀髪の少年は、この光を白髪の彼へ浴びせようと狙いを定める。 これを食らえばただでは済まないのは、誰の目にも明らか。 しかし、少年は至って落ち着いていた。 瞬間、網膜を焼くほどの光が広がる。 降りたる天からの光柱。 神からの審判の如く。 地面ごと白髪の彼を突き抜ける。 圧倒的な力。 爆発の熱量、爆音、衝撃、全てが規格外。 地響きが唸り、大地が小刻みに揺れる。 そして、威力の大きさを物語るキノコ雲が、月明かりを完封した。 地面に深々と開く黒墨色の穴。 焼却され、漆黒に染まる平原。 焼き尽くされた後の、あの鼻を焦がす息苦しさが周辺に立ち込める。 「やったか…?」 少年少女達は、煙の奥の中を探る。 「力だけで押し切る…か。 愚行だな、リュウガ。」 突如暴風が吹き荒れ、天を覆う暗雲を彼方へと追いやる。 穴の中央に浮遊する、一人の影。 顔を見せた月が、彼の体を白で被せた。 驚くべきは、その姿。 上半身において、服の左半分が焼失しているが、本体には、傷一つついてはいない。 唖然とする能力者の衆。 予想は、していた。 彼の能力は、他のそれとは違っていた。 だが、これ程までとは…
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