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ラズベリー
空は飴色のシャワー
お菓子の家にピーカンパイ
赤いタルトでアナタを誘う
星が降る降るパーティー
「赤い赤いフランポワーズ」
歌を歌う
リズムは8bitを刻む
「キミの好きなフランポワーズ」
赤い赤いフランポワーズ
キミを塗りつぶしていく
赤い赤いフランポワーズ
キミにお似合い……
「水無月最高裁判官、その歌はなんですか」
「あら、あなたをイメージしてみたんだけどお気に召さなかったかしら?」
「いえ、とりあえず仕事の報告を」
「報告書はもう読んだけど、あなたから何か報告はあるかしら」
「ありません」
穏やかな過ごしやすい夜
報告書を持ち幾度と訪れた部屋で水無月最高裁判官は優雅に過ごしていた
まるで自分が訪れるのを予見していたように
「…………」
手元には鮮やかな赤を注いだ硝子細工のグラス
目を奪う赤に少しみとれていると視線に気がついたのか彼が微笑んだ
「赤い赤いフランポワーズ」
「それがですか」
「ええ赤だけを集めて作った真っ赤なフランポワーズ……一口いかが?」
「いえ、まだ仕事中なので」
「言うと思ったわ」
穏やかに笑い赤いフランポワーズに口をつける
暫しの沈黙
酷く穏やかな沈黙と空気に体の力が抜けそうになるのを堪える
「少し甘過ぎるかしら……」
そう苦笑しながら笑みを崩さない彼に思わず口を開く
「甘過ぎるぐらいがいいんですよ」
決して甘くはない仕事
甘さを見せたら、やられるのはむしろこちらなのだから
だから今だけでも甘過ぎるぐらいがいいのだろう
「夢も愛も、この時間も」
甘過ぎるぐらいちょうど良い心地なのだ
そう穏やかに目を閉じれば目の前の気配が笑った気がした
終わり
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