一章 辺境の街

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   この街には長期間滞在する可能性がある。そうなれば関わることになるかもしれないが、積極的に関わりたいとは思えなかった。  彼女のランクはおそらくAAからAAA。『リューティス』のランクはAAであり、関わる可能性はなきにしもあらずである。  この街は国境の関所から一番近くにあり、国越えをする者はこの街にある役所で越境の許可を申請する。リューティスはすでに越境許可証を得ているが、この街の役所で一度確認をしてもらい確認証明書を得てから関所に向かった方が、関所で待たされる時間が短縮されるのだ。  そしてその確認にかかる時間が、短ければ一週間、長ければ三週間である。  よって暫しの間この街に滞在することが確定しており、冒険者であるリューティスがその間依頼を受けるのは当然である。  依頼は一人で受けられるものばかりではない。複数人で受けるものを受注すれば、彼女と関わり合う可能性が少なからずあるのだ。  しかし、顔が知られている彼女と積極的に関わりたいとは思えない。ちらりと見えた彼女の顔立ちは整っており、関われば変な恨み妬みを受けるかもしれない。平和にただ旅をしたいだけのリューティスには、避けたいことである。  ギルド“黒龍の翼”支部は漆黒の石を積み上げて造られた建物だった。重々しい印象の外観であったが、中に足を踏み入れてみると意外なことに内装は木製で、暖かみを感じさせられた。  依頼掲示板の前に立つと、高ランクの素材採集依頼が目立っていた。Sランク以上のものではドラゴンの鱗や最上級の鳥型魔物の羽等、危険度の高い依頼が多い。  一方、下位ランク依頼もそれなりの数があった。その中で最も募集人数の多い依頼は街の防壁の補修。四十人ものEランク以上の冒険者を募集している。 .
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