二章 人さらい

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   一先ずこれで十一人は救える。残りの十一人については、ギルドに任せる他ない。  街中の魔力を探っても、囚われている場所について怪しい所は見つけられるが特定はできない。囚われている人物の魔力さえわかればどうにかなりそうであるが。 「肩は大丈夫? 打ってない?」 「……大丈夫です」  念のため打ち付けた場所に魔力を余分に巡らせて治癒能力の向上をはかっているが、大した痛みもなく問題はなさそうだった。 「……あなたは貴族様?」  先程から話しかけてくる女性の後ろから恐る恐る話しかけてきたのは、リューティスと同年代だろう少女である。 「いえ、貴族ではありません」  きっぱりと否定したリューティスに、少女は明らかに安堵した。もし貴族ならと緊張していたに違いない。  貴族と間違えられる原因は理解しており仕方がないことだとわかっている。しかし、女装して全く男だと気がつかれないことについては、既に崩壊しかけている自尊心に太い槍を刺された気分であった。  鉄の棒と石の壁に囲まれたここは、間違いなく牢と呼ばれる場所であろう。奥の方に壁で仕切られた一角がある。おそらく便所だ。  囚われた者たちは皆薄汚れた姿をしていた。皆、若い女性か子供である。隅の方でまだ五、六歳の幼い少女が声を圧し殺して泣いていた。近くにいる少女があやしているが、彼女の表情も泣きそうに見えた。  誰も彼もが不安そうな顔をしている。食事もまともに与えられていないのだろう、半数が痩せこけ三、四人は動く気力もないように見える。 .
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