二章 人さらい

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   男たちは捕らえた女子供が逃げられるとは全く思っていないようで、手かせ足かせはつけられていないが、当然、牢の鍵はかけられているだろう。確かめずともわかることである。一応確かめてみたが、当然開かない。 「鍵はかかってるよ……。あの男がそんなへまをするわけがない」  諦めの混じった声だった。  男たちに勘づかれる可能性がある以上、リューティスの目的を告げることはできない。 ここでリューティスが何か励ましを口にしても、気休めにもならない。彼女たちは苛立ちを覚えるだけだろう。  つまるところ『合図』があるまでリューティスは動けないのである。とはいえ時間を無駄にするつもりはない。リューティスは再び座り込んで壁に背を預けると、牢の出入り口の鍵を観察し始めた。  ただの鍵ではない。魔方陣の組み込まれた一種の魔法具である。一般的な鍵に加え、更に特定の波長の特定の魔力を流さなければ解錠できぬようになっているのだ。  しかし、魔力に敏感なリューティスはすぐにその魔方陣を魔力の流れから推測して読み解いていた。幸い、リューティスの扱える属性の魔力である。  牢には物体強化魔法がかけられており、強引に破れないことはないが後々気がつかれれば面倒なことになるため、強行突破はできるだけ避けたかった。  鍵の魔方陣の読み解きは、魔力に敏感で付け加え魔方陣の知識があればできぬことではない。あとは一般的な鍵を解錠できる腕があるかの問題だ。 .
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