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デルタが先頭に出る。リューティスは二番手のアルバードのすぐ後ろについた。
宿はもうすぐそこだ。デルタは急に方向を変えると、宿の向かい側の建物の屋根を蹴った。
『──今です』
宿の扉が開く。ジェフの姿がちらりと見え、彼はすぐに横に退いた。
デルタがナンシーを抱えたまま飛び込む。ナンシーを庇いつつ受け身を取り勢いを殺した。
続いて飛び出したアルバードは殿下を胸前に庇うようにして背中から部屋の中に落ちる。
リューティスは宿の向かい側の建物の屋根を強く蹴り、宙で方向転換をしてアルバードを避けて着地した。
そして窓がすぐさま閉められる。魔法の明かりに照らされた室内はやや明るく、日が暮れてもなお明るく照らされた大通と変わらないほどである。
リューティスはユリアスを下ろし口を開こうとした殿下に唇に人差し指を立てて静かにするよう伝えて、アルバードと目配せをし合った。
魔武器を喚び出しながら周囲の魔力と気配を探る。アルバードとデルタの荒い呼吸を繰り返す。沈黙の中、外の喧騒が聞こえてくる。追っ手は宿の近くをうろうろとさ迷っていたが、数分して諦めたのか北の方へと去っていった。
リューティスは詰めていた息を大きく吐き出す。同じく息を吐いたデルタはナンシーを肩から下ろし、それにならってアルバードが殿下を下ろす。
リューティスは殿下の前に膝を付き、頭を垂れた。
「申し訳ありません、殿下。御身を危険にさらしてしまいました。如何なる処罰も謹んでお受けいたします」
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