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隣にアルバードとデルタが膝をつく。沈黙が漂った。
ナンシーを狙っていたはずの敵は、殿下にも目を向けていた。理由はまだわからぬが、殿下を危険にさらしたのである。
もとより戦うことを想定しての任務ではあったが、殿下が戦うような事態になる前にどうにかするのがリューティスたちの仕事だった。
「面を上げよ」
逆らわずに顔をあげれば、苦笑気味の殿下と目が合った。
「仕方のないこととはいえ、そなたの主は我が父であり、私ではなかろう? 私に頭を下げる必要はないぞ」
「いえ、殿下は──」
「そなたの仕事は」
殿下は言葉を切ると、部屋に備え付けられている椅子を見つけて腰を下ろした。
「父を──陛下をお守りすることだ。違うか?」
誰かが小さく声を漏らした。声の主は、レイガンかジェフかはたまたユリアスかナンシーか。
「……違いありません」
「うむ。ならばそなたとデルタには罰は不要。私が罰すべきは我が騎士であるアルバードのみだ」
隣にいるアルバードがぴくりと身体を揺らした。
「とはいえ、今回はそもそも戦いを想定した任務であった。そなたらに非はない。今回のことは不問とする」
「はっ! 殿下のご温情に感謝いたします」
アルバードにならって深々と頭を下げる。それから一息ついてから、立ち上がった。
するとぽかんと呆けたままこちらを見つめるジェフと目が合う。
「……ジェフ?」
名を呼ぶと彼は狼狽した。
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