二十八章 白いドレスと白いローブ

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  「いや、あの、えっと、その……」  目を泳がせる彼に首をかしげてレイガンを見ると、彼は声を圧し殺して笑っていた。  ちらりとこちらを見たレイガンと目が合う。 「ふっ……、似合うなドレス!」  彼らの反応に自分の今の格好を思い出したリューティスは、表情を消して白いドレスを見下ろした。  あれほど駆けたというのに、全く輝きが損なわれない布地に驚く。どれほど高価な布を使って作ったのかと頭を悩ませた。 「あっ!」  彼女の声に思わずそちらに目を向けた。ユリアスの目はリューティスの左腕に向けられている。  近づいてきた彼女に一歩退くが、左腕を掴まれて眉尻を下げた。 「怪我してるじゃないですか!?」  言われて思い出す。そういえば侵入者に腕を切られたのだ。 「……もう血は止まっておりますから大丈夫です」 「大丈夫じゃないですっ」  レースの手袋を脱がしにかかった彼女を振りほどくことなどできずされるがままになって目をそらすと、にやにやと笑うデルタと目が合った。 「君が怪我したのを初めて見ましたよー。騎士の名折れですよ? ……あはは、あーんな必死な声で名前呼んじゃって、そんなに好きなんですねぇ彼女のこと」  顔に血が集まる。否定も反論もしないのはどちらもできないからである。 .
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