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「それで、このあとどうします?」
デルタの視線が向いている先は自分だ。
「……転移の魔方陣札はどうなさったのですか?」
「あぁ」
デルタは“ボックス”から魔方陣札を取り出した。魔力を貯蓄するための魔石に込められている魔力はほとんどない。
「これ、私じゃ魔力足りませんよ。なんせ転移許可付きでこの人数ですし」
転移許可とは、転移防止結界を抜けるための暗号術式だ。無論、結界ごとに暗号は異なっており、王族の屋敷ともなれば暗号式は週に一度は変更されるだろう。
リューティスは魔方陣札を受け取って魔力を込めた。魔封具もつけていない今、この程度容易いことである。
「これでいいですね」
「おぉ、さすがです。ありがとうございます」
デルタはそれをにこにこと笑って受けとる。そして殿下に一歩近寄った。
「お手を失礼致します」
「うむ」
デルタは殿下の手を取る。リューティスはデルタの肩に手を置き、ユリアスに右手を差し出した。
「……ユリ」
「はい!」
ユリアスは破顔して、手を取るのではなく腕に抱きついていた。さらに赤くなった顔を伏せる。
「失礼します」
アルバードがリューティスとは反対側のデルタの肩に手を置き、ナンシーの手を取った。
黙って成り行きを見守ってくれていたレイガンとジェフにちらりと目を向ける。レイガンはよくわかっていない様子だったが、魔法に詳しいのだろうジェフは状況を理解してか肩をすくめて笑った。
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