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「え、あの、リュース君」
困惑した様子の彼女に、“ボックス”を開けさせて買った服を仕舞わせる。
「……どちらも似合うと思います」
声を絞り出してどうにか小さく呟くと、ユリアスは僅かに目を見開いたあと嬉しそうに笑んだ。
「……あの」
服屋を出てからリューティスは疑問を思い出して訊ねることにした。
「はい」
声を掛けると彼女から綺麗な笑顔が返ってきて、また目を泳がせる。
「……学園はどうなさったのですか」
「え? 今日は休みですよ」
言われて思い出した。冒険者は週という概念を日数的に使うことはあっても、曜日を気にする者はいない。そのため大半の者は曜日感覚というのが非常に曖昧である。
彼女が通うニアン学園は週の終わりに一日休みがあり、六日間連続で授業があって休みが一日となっている。
おそらく昨日は公爵の娘として学園を休み、週末である今日はもとより学園が休みということだろう。
「失念しておりました」
「あれからもう半年近く経ちますし、忘れちゃうのも当然だと思います」
学園に通っていた頃を思い出し、懐かしい気持ちになった。まだあれから半年しか経っていないとは思えないほど、何年も昔のことのような気がする。
思い返すとあの日々が幻ではなかったのかと思うくらいに、楽しい日々だった。失ってしまった時間はかえってこないと知っているにもかかわらず、あの日に戻りたいと心のどこかで思っている自分がいる。
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