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メニューを眺めていると、ぽつりぽつりと雨が屋根にあたる音が聞こえ、直後小声の会話が聞こえなくなる豪雨が降り始めた。
「うひゃあ」
「こりゃひでぇ」
「一昨日も降ったばっかじゃねぇかよ」
外から店の中に飛び込んでくる人々。僅かな間にずぶ濡れになった彼らの口からこぼれでた愚痴。
「危なかった……」
「うん」
彼女の呟きに肯定し再びメニューに目を向けようとするが、彼女の視線が気になって顔をあげた。
──ほんの拳一個分の距離にある彼女の顔。
咄嗟に身を引いて顔を背けた。一気に顔に血が上り、赤らんでいくのを止められない。
「あ……」
彼女が溢したのはどこか残念そうな声。
その後注文した料理はまずまずの味で、彼女も大きな不満は抱かなかったようでほっとした。
昼食を終えると、また街を歩く。甘い匂いを放つ露店に惹かれる彼女に、小麦粉を薄焼きにしたものに果物を乗せて蜂蜜やチョコレートをかけて包んだ甘い菓子を買って手渡すと、嬉しそうに礼を告げられた。
一般的な貴族の令嬢といえば、何かを直接手に持ってかぶりつくということなどしない。しかし、彼女の通うニアン学園には冒険者ギルドの依頼を受注しでこなすという授業があり、つまるところそこの生徒である彼女は一般的な貴族の令嬢より遥かに旅に慣れており、庶民の料理にも慣れているのである。
「一口食べますか?」
ベンチを見つけて腰を下ろし、隣に座った彼女の食べる様子をちらちらと見ていると、首をかしげた彼女にそれを差し出された。
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