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二人いた先客のうち一人は、綺麗な格好をしているがあまり裕福そうには見えない女性だった。緊張した面持ちで銅製の鏡を見つめているのが、その鏡越しに見える。
もう一人は比較的裕福な家の生まれの少女であろうか。笑顔で髪結い師と会話をしながら、髪が結われていく様子を銅製の鏡で見ている。
あまり見ていても髪結い師に迷惑だろう。リューティスは“ボックス”から本を取り出し、ゆっくりと読み始めた。
──ユリアスが立ち上がった気配がして顔をあげた。
彼女の髪は見事に結われていた。耳の辺りから後頭部にかけて両側から編まれており、残りの髪は緩い曲線を描きながら背中に流されている。
「リュース君、どうですか?」
歩み寄ってくる彼女と目が合い、咄嗟に反らした。
「……その、似合っています」
「ありがとう」
手を取られ彼女に目を向け、嬉しげな笑顔を直視できずにまた目をそらす。
「そちらも方もどうですか?」
髪結い師の声でユリアスの手がぱっと離された。消えた温もりに感じた喪失感に動揺しながらも髪結い師に目を向ける。
「……僕ですか?」
「えぇ。お代はいただきませんから少しだけ御髪を触らせていただけませんか?」
ちらりとユリアスを見ると、彼女は珍しく眉を寄せて考え込んでいるようであった。リューティスは本を“ボックス”に仕舞って彼女を見上げる。
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