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そのうち殿下が焦れて諜報を西の国の第三王子──黒幕とされる人物のもとへ送り込むだろう。そうなれば時間の問題である。
とはいえ、今はまだ彼女を夜遅くまで出歩かせるのは危険だ。守る自信はあるが、彼女を危険にさらす気はない。一緒にいたいとは思うが、彼女の身の安全が優先である。
ユリアスに手を引かれて歩いていると、知っている魔力が近くにあるのを感じた。そちらに目を向けると、遠くにレイガンとジェフの姿がある。
「どうかしましたか?」
ユリアスに声を掛けられて、彼女を見下ろす。不思議そうな様子でこちらを見上げる彼女に、手で二人がいる方を示した。
「レイガンさんとジェフを……、その、今一緒に行動している二人を見つけて」
「え? ……あぁ」
二人と顔を合わせているユリアスは、彼らの顔を覚えていたらしい。
「観光、ですか?」
「どうだろう……。貴族の集まりに便乗した『あれ』のことをレイガンさんは耳にしていたみたいだから、今日は出歩かない方がいいってわかっているはずだけど」
理解していながら出歩いているのはリューティスも同じであるが。
しかし、ギルド帰りには見えない格好である。レイガンは甲冑を着ておらず、ジェフもいつもの革製の防具を身に付けていない。
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