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「……レイガンさんがいるから大丈夫だろうけどね」
彼はAランク冒険者である。冒険者歴が長く、リューティスよりも経験が豊富だ。彼ならば大抵のことは自力でどうにかしてしまえるはずだ。
しかし、貴族が関係してくるとなると、レイガンでもどうすることもできないことがある。レイガンは平民だ。貴族位を持つ者を相手にするには分が悪い。
だからこそ彼は観光を控えていたのだろう。
「それならどうして気にしているんですか?」
「今回の件は貴族が関わっているから、平民ではどうにもできないこともある」
レイガンは周囲を警戒している様子だった。ジェフは呑気な顔をしているが、レイガンの警戒には気がついているのだろう。時折彼の魔力が周囲に放たれ、辺りを探っているのが見受けられる。
貴族が近づいてくる前に逃げようということか。確かにそれが一番正しい対処法かもしれない。
「ゆっくり観光はできないと思うんだけど……」
ならばなぜ二人はこのような場所にいるのだろうか。 ふとレイガンがこちらに気がついた。ジェフを引っ張りながら近寄ってくる。
「ここにいたのか」
「……俺を探していたの?」
彼がここにいることに対しての疑問はすぐに解けた。しかし、リューティスを探していた理由がわからない。
「ギルドの方で呼び出しがあったぞ」
「緊急招集?」
レイガンはやや眉をひそめ、首を捻った。
「招集じゃねぇらしいが、なんでも治癒魔法師をかき集めてんだと。至急来てほしいらしい。詳しい話はリュースに直接するっていってた」
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