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治癒魔法師を集める──その言葉に目を見開く。つまり何かがあって治癒魔法師が大量に必要になった、もしくは必要になりそうだということである。
「……ユリ」
リューティスはユリアスを見下ろした。人手が足りないならギルドへ行きたいが、ユリアスを放っておくことはできない。
「私もいきます。上級治癒魔法が使えるようになりましたから」
ぐっと拳を握りしめたユリアスの真剣な瞳がリューティスを見上げる。リューティスは小さく笑った。
「上級治癒が使えるようになったんだね」
「はい」
彼女の属性は風だ。風属性の治癒魔法は複雑で、水や光属性の治癒魔法に比べて難しい。その上級魔法が使えるようになったという彼女は、どれ程努力を重ねたのだろうか。
「私だってやればできるんです。……制御が上手だってリュース君が言ってくれたじゃないですか」
随分前に落ち込んでいた彼女に対して言った言葉だ。まだ覚えていてくれたのかと笑みをこぼす。
「はいはい、いちゃつきたいのはわかるがギルドに呼ばれてるんだって」
レイガンの声で思い出す。そして彼がいることも思い出してユリアスから一歩離れた。熱くなった顔をそらす。
「あ……」
残念そうな声が彼女から聞こえてきたが、そちらには目を向けずにレイガンを見た。
「近くにあるギルドへ行けばいいのですか」
「あぁ。幸い“月の光”が近くにある。……そんなに睨むなよ、嬢ちゃん」
後ろ半分はユリアスに向けての言葉だろう。ちらりと彼女を見たレイガンが顔をひきつらせた。つられて彼女を見ると、彼女らしからぬ表情でレイガンを睨んでいる。
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