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助けるって言っても、和海さん相手に僕じゃ役不足だ。
とりあえず話を変えるとこから始めてみよう……。
「竹子姉様、もう一度説明してください。まず家出した理由から。」
「え、家出?」
和海さん、松本さん、蘭之助さんが揃って驚きの声をあげた。
三人は途中からしか話を聞いていなかったようで、竹子姉様の来訪の理由を今知ったらしい。
和海さんは苦い顔で竹子姉様に尋ねた。
「家出で、何故うちに?」
竹子姉様の答えは短いものだった。
「他に宛がなくて……。」
「結婚を控えた娘が男しかいない屋敷に一人で訪ねてくるなんて、悪い噂が立つぞ。」
「そんなの構いませんわ。世間になんと言われようが……。」
「俺は大いに迷惑するんだが?」
「あ……ご、ごめんなさい……。」
しょんぼりと肩を落とす竹子姉様を見て、和海さんは深い溜め息をもらした。
「で、この屋敷に来てどうするつもりだった?」
「それは……。とにかくお父様たちのもとから逃げ出すということで頭が一杯だったものですから……。」
「そらァ大層小さな頭だなァ?」
「お蘭、余計な口出しをするな。おい、結婚が嫌な理由は?」
「それは……柳苑寺家に資金援助をしてくれる人と結婚をしろと父に言われ、決まった結婚相手が造船会社の社長で……。」
「身分が気に入らないのか?」
「いいえ。でも、その造船会社の社長というのが、私より三十も歳上で……。それに品がなくて、無教養で、横暴で……とにかく、嫌なのです。」
「ちなみに相手は誰だ?」
「馬川安次郎氏です。」
「あー……あいつかぁ……。」
和海さんが遠くを見る目をしたので、僕は松本さんにこっそりと尋ねた。
「松本さん、馬川氏はどんな人なのですか?」
「馬川造船所という会社を経営する、今年で五十歳になる男です。すでに二度と結婚していますが、いずれも離縁になりました。理由は定かではありませんが、どうも馬川氏の性癖が原因だとか。」
「性癖?」
「少年愛者だという噂があるのです。」
「えっ?!」
「昨年横須賀で起きた連続少年誘拐事件を知っていますか?」
「たしか十歳から十四歳の男の子が三人くらい拐われて行方不明になった事件ですよね……?」
「正確には五人誘拐され、二人がいまだ行方不明の事件です。実はその事件の黒幕が馬川だと、その筋では有名なんです。」
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