第2章

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姉様は少しだけほっとした顔をして、僕に言う。 「はなちゃんみたいな弟がいて、わたくしは幸福者ね。」 「やめてよ姉様。そんなこと言われたら照れるよ……。」 「うふふ。そうだ、今度お手紙を書くわ!お返事ちゃあんと頂戴ね?」 「うん、わかった。もう時間でしょう?玄関まで見送るよ。」 竹子姉様は兄弟のなかでも一番仲が良かった。 だからこそ、姉様が原和海のところに行くことにならなくて本当によかったと思う。 もし姉様が体を売るなんてことになったら…… そんなことを考えるのも恐ろしい。 竹子姉様は何度も振り返りながら、桃子姉様のところへ出掛けて行った。 僕は竹子姉様の姿がすっかり見えなくなってから、屋敷のなかに戻る。 さて、どうしよう 清陽兄様は絵を描いているときに部屋に入るととても怒る。 それに少し年が離れているせいか、僕はあまり可愛がってもらった記憶がない。 お父様たちの話ももう終わっただろうから、とりあえず応接間に戻ってみよう 僕はのんびりと応接間に向かい、ドアを開けようと手を伸ばした。 でも驚くような言葉が聞こえて、ドアノブをひねることはできなかった。 「それは英陽君があなた方の実の子どもではないからですか?」 ……え? 今、なんて? 僕はドアに張り付いて、中の会話に耳を澄ます。 今の声は原和海の声だ。 じゃあまた彼の質の悪い冗談なのか……? 「それがないといったら嘘になります。」 今度はお父様の声。 「今まで分け隔てなく可愛がってきたつもりです。ですが、いざというときはどうしても我が子の方が可愛く思える……親とはそういうものではないですか?」 「だから英陽君のことをあんなに易々とつきだしたんですね。」
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