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お父様が苛立ちを声に滲ませて言う。
「貴方に責められる筋合いなどありません。それに、私たちは今まで十分にあの子を可愛がってきました。これはその恩返しだと思っています。あの子のことはどうぞお好きになさってくだい。もう返していただかなくても結構ですから。」
「あなた方……。」
ドサッ
僕は腰が抜けて、床に尻餅をついてしまった。
その物音に、応接間のドアが勢いよく開く。
そしてドアの向こうから現れた原和海は、僕を見ると表情が固まった。
「英……!なんでここに……お前今の聞いてたのか?」
僕は何も答えられず、気付いたら頬を涙が伝っていた。
「ッチ……!子爵殿、悪いが今日はこれで失礼する。それから家と土地の件だが追って連絡をさせていただく。」
「な、なんですって?!それは困ります!」
お父様とお母様が立ち上がり、慌てて原和海にすがりつこうとする。
二人とも僕のことを見ようともしない。
なんで……お父様、お母様、さっきの話は本当なの?
原和海は冷たい目で二人を一瞥すると、僕を抱き起こした。
「行くぞ。」
もうなにがなんだか分からない
僕はそれるがまま、肩を抱かれて外へ連れ出される。
僕を馬車に乗せた原和海は、僕のことをきつく抱き締めた。
「すまない。お前に聞かせるつもりはなかったんだ。やっぱりお前を連れてくるべきじゃなかった……本当にすまない。」
なんでこの人が僕に謝っているんだろう?
「僕…………いらないんだ……。」
言葉にした途端、先程のお父様たちの言葉がよみがえり、息が苦しくなる。
「英、大丈夫だ。俺がいる。大丈夫だから。」
原和海は僕を抱き締める腕に力を込め、それは苦しいくらいだった。
僕は無意識のうちに原和海にしがみつき、子どもみたいにわーわーと泣き出してしまった。
自分でも一体どれくらい泣いたのか分からない。
気付いたら僕は原和海に抱えられて馬車を降り、原和海の屋敷の中を移動していた。
後ろの方で松本さんが何か言っている……
今は何時?
あれからどれくらい時間が経ったの?
そうだ、今日は蘭之助さんのところへ行くことになってて……
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