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そう願っていたにも関わらず、僕はきっかり九時に目覚めてしまった。
そしてほとんど同時にサンドイッチを皿に乗せた原和海が部屋に入ってきた。
「なんだ、起きてたのか。腹減ってるだろ?松本がサンドイッチを作ってくれたぞ。」
「ありがとうございます……。」
原和海はベッドに腰掛け、僕の顔覗きこんできた。
さんざん泣いた後だったし、正直顔は見られたくない。
そう思って目をそらすと、原和海は僕の頭を撫で、冷静な声で言った。
「俺が答えられることには何でも答える。まず何から聞きたい?」
僕は原和海と目を合わさず、一番に浮かんだ疑問を投げ掛けた。
「僕は本当にお父様とお母様の子どもじゃないんですか?」
「ああ、そのようだ。土地を譲渡するにあたりこちらで色々と調べていたんだが、そのときに分かった。」
「じゃあ僕の本当の親は……。」
「たぶん、朔小路(さくこうじ)伯爵だと思う。柳苑寺子爵の妹が嫁いでいた家だ。今はもう廃籍になっているがな。ちょうどお前が生まれた年に朔小路家である事件があって、その際朔小路伯爵とその奥方、つまりお前の両親は死んでしまったんだ。それで兄の柳苑寺子爵が赤ん坊のお前を育てたんだろうな。」
「事件?」
「殺人事件。犯人は伯爵が外で囲ってた女だった。」
原和海は僕の口にサンドイッチを一切れ詰め込むと、眉間にしわを寄せて呟く。
「十七年前っていうと俺はちょうど東京を離れていたから、あまり詳しくは知らない。当時の新聞でも見れば、あることないこと書いてあるとは思うが……。ああ、たぶんお前の兄弟たちにも、お前が実の子じゃないということは話していないようだぞ。まあ一番上の兄貴あたりは察してるかもな。お前があの家の行ったときには物心ついていただろうから。」
僕はなんとかサンドイッチを飲み込みながら、清陽兄様の冷たさにやっと合点がいった。
あれはきっと、僕が実の兄弟じゃないことを知っていたからなんだろう。
「あとは、何を聞きたい?」
原和海はそう聞きながら、また僕の口にサンドイッチを詰め込んだ。
この人は、何を聞きたいかと言いながら、なんで喋れなくするんだ……
いらっとしながら、頑張って口の中のものを飲み込んだ僕は、逆に原和海に尋ねた。
「あとは何を話していないんですか?」
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