第2章

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「そうだなぁ……お前に遺されてた朔小路家の財産が、柳苑寺家に食い潰されてることとか?」 「え!」 「……むしろその発想に至らなかったか?」 「……全く。」 原和海が今世紀最大なんじゃないかというくらい大きなため息をつく。 そして、僕の顔を変な生き物でも見るかのような目で見つめる。 「信じられないくらいおめでたいやつだな。たぶんお前のことを引き取った理由の一つが、お前に遺されてた財産だぞ。」 「そうなんだ……。」 「もちろん、お前のことを可愛がっていたっていうのは嘘じゃないはずだ。それはお前がよく分かってるんだろうから俺はどうこう言わないが……。ただいざというときに人間の本性が出るからな。」 原和海はそれだけ言うと、また大きなため息をついた。 「このあとお前はどうしたい?」 「どうって……。」 「お前が柳苑寺の家に復讐したいっていうなら、俺があの家にしてやってる一切の援助を断って、山手の家の件も白紙に戻す。それだけであいつらは終わる。俺はお前に何かしてやりたいとは思ってるが、別にあの柳苑寺家にはなんの恩もないし、思い入れもない。どうする?」 「そ、それは……。」 「浪費しか才能がない子爵と、その妻、現実逃避で絵を描き続けるアホ、病弱な姉……下二人は多少はましだな。だが借金を返せるほどの能力はない。俺が手を引けば全員堕ちるとこまで堕ちるだろ。」 僕の頭の中を嫌な想像が駆け巡る。 「そ、それはいやです!」 原和海は冷めた目でサンドイッチを眺めながら、また僕の口に運ぼうとする。 「お前のことをあんなに簡単に切り捨てたやつらなのに?」 僕はサンドイッチ責めから逃げながら頷いた。 「はい。それでも……僕を今まで育ててくれたわけだし……それにお父様の気持ちが分からないわけでもない。困っていたら誰だってお父様みたいなことをする可能性があるはずです。だから……。」 でも、僕はこんなに図々しいお願いをこの人にしていいんだろうか……
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