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「ま、せいぜい頑張って思い出すことだな。」
鼻で笑う原和海を睨んでいると、ますます楽しそうな顔になって、彼は僕にこんなことを言った。
「そうだ、物忘れに効くおまじないを教えてやろうか?」
「そんなものがあるんですか?」
「ああ。ちょっと目を閉じてみろ。」
僕は言われたまま目を閉じる。
チュッ
……ん?
なに……今唇に何か柔らかいものが……?
はっとして目を開けると、鼻先が触れそうなところににこにこした原和海がいた。
「……つかぬことを聞きますが、今何しました?」
「キス。」
やっぱりかああああ!!!
僕は慌てて口を袖でぬぐった。
あまりにごしごしと強く拭うものだから、唇が切れてピリッとした痛みを感じる。
「おいおい、その反応は傷付くなぁ。」
原和海は相変わらず楽しそうだ。
「傷付くのはこっちですよ!この変態!なに考えてるんですか?!」
「英が目を閉じた顔って可愛いなぁって。」
「ッば、ばかっ!貴方そっちの趣味はないって言ってたじゃないですか!」
「ない。俺は抱くなら女って決めてる。」
じゃあ今のはなんだ、今のは!
「どうした、そんな恨めしそうな顔して?ガキのはなちゃんには刺激が強かったか?もしかして初めてだったとか?」
図星だ……けど、こんな男にそんなこと知られたら絶対に馬鹿にされる!
「だ、だからその呼び方やめてください!そ、それに初めてなんかじゃないですし……!」
「なんだ、そうなの?じゃああの程度できゃんきゃん騒ぐこともないよな。」
「え、ええ。そうですね。いきなりで驚いただけですから。」
「ああ、なるほどなるほど。だってあんなキス、外国じゃ挨拶代わりだもんな?」
「え!」
本当に?!
「いやー、そうかそうか、初めてじゃないんだなぁ。」
原和海め、なにか企んでる顔してる……
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