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「でもなぁ、ちょっと嘘臭いんだよなぁ。」
切れ長な目が僕を探るように見てきた。
「そ、そんなわけないでしょう。」
少し声が震えてしまって、僕は嘘がばれないかとドキドキしてしまう。
原和海はぽんと手を叩くと、焦る僕に追い討ちをかけるようなことを言った。
「そうだ、お前から俺にしてみろよ。」
……はい?
「言ってる意味が分からないんですが……。」
「たかがキスだろう?お前も慣れてるなら別に相手が誰であろうとできるだろうしさ。なんせ、“たかが” キスだもんな?」
挑発的な言われ方をされ、僕はかっとなり、反射的に言ってしまう。
「いいですよ!キスくらいしてやります!」
そして、言ってしまってから激しく後悔した。
なんでいいなんて言っちゃったんだ、僕は!!
いいわけないだろう!!
完全に原和海の術中にはまってるじゃないか!!
「お~、男らしいところあるじゃないか。感心したよ。」
ニヤッと笑った原和海は、挑戦的な目で僕を見ていた。
ああ、これもう引けないやつだ……。
頭のなかが真っ白になり、呼吸が浅くなる。
どうしよう……どうやればいいんだろう……
混乱していると、原和海が小馬鹿にした口調でからかってきた。
「どうしたはなちゃん。男の子だろ?しっかりしろよ。」
ああああああ!
物凄く、果てしなく腹が立つっっっ!!
こうなったら覚悟を決めてやる!
頭で考えると心が折れそうになるんだから、勢いでしてしまえばいいんだ!
僕は原和海のシャツを掴んで引き寄せ、ほとんどやけくそになって唇を押し付けた。
よしっ
これで終わりだ……!
ほんの数秒の触れ合いだけど、キスには変わりない。
僕は急いで体を引く。
……つもりだったが、原和海に手首を掴まれ、押し倒される。
「ちょっと!」
抵抗しようと開いた口は、原和海の唇で塞がれた。
「ーーッ!やめッ……!んっ……!」
逃げようとしても、僕よりずっと重い人に乗られた状態で僕ができることなんて、手足の先を動かす程度。
それが無駄な抵抗だというのは自分がよくわかった。
「ちょ……!ほんとに………ッふあ?!」
なに、今のあったかいぬるっとしたのは……?
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