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僕の上唇と下唇の間をこじ開けるように動くものに、僕は驚きのあまり一瞬唇を閉じる力を緩めてしまった。
その途端、待っていたとばかりに熱くてぬるっとしたものが口のなかに侵入してきた。
これ……まさか舌?!
嫌だと叫ぼうとすると、原和海の舌が僕の舌に絡みつく。
根元から激しく、そして吸い上げるように動く舌の感覚は未知のもので、腰の辺りがぞくぞくした。
行き場を失い口のなかにたまった唾液が僕と原和海の舌でかき混ぜられ、身体中に響く水音をたてる。
唇が触れるだけのキスだって初めてだったのに、いきなりこんなに深いキスを味わってしまい、僕の頭は混乱していた。
キスって、こんなふうに体の芯が蕩けそうになるものなの……?
聞きようのないそんな問いかけは、原和海からする葉巻と、甘い匂いでよく分からなくなってしまう。
激しいキスに息が苦しくなって身をよじると、原和海は一度唇を離した。
僕たちの間には銀色の唾液が糸を引き、それを見た瞬間、僕はとてつもなく恥ずかしくなる。
こ、こんなの……すごく、いやらしい……
原和海は僕の唇を親指で拭い、不敵な笑みを浮かべる。
「今お前が何を考えたか当ててやろうか?」
「や、やめてください!と言うかもう満足したでしょう!」
「いやあ、それが気分が乗ってきちゃってねえ。俺もまだまだ若いなあ。」
「はい?」
言ってる意味が分からずに聞き返すと、原和海がまた顔を近付けてきた。
またあのキスをされるんだろうか?
今度は隙を見せまいと唇を固く結ぶと、彼は僕の耳元に顔を埋めた。
ツンツンした硬い髪が頬や首に触れてくすぐったい。
「英、和海って呼んでみろ。」
低くて甘い声で原和海は、そんなことを言う。
耳にかかった熱い息のせいで、体が痺れてしまって、僕の頭はまともに働いていない。
だから普段だったら無視するであろうお願いに、僕は素直に応じていた。
「和海……さん?」
「もう一回。」
「和海さ……ひゃあっ!」
み、耳に舌が!
「やッ……く、くすぐったい!」
和海さんは逃げようとする僕を押さえつけ、耳をしつこく責めてくる。
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