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松本さんはドアのところで振り返ると、にこっとして首を傾げた。
「はい、なんでしょう?」
「あの、本当に助けてください!和海さんをなんとかしてください!」
「なんとか……?よく分からないですけど、お二人とも楽しそうですし、私は邪魔しないようにしますね。では、また明日。」
そして松本さんは僕の制止虚しく、部屋から出ていってしまった。
すっかり忘れていたけど、松本さんも変人だった……
「お二人とも楽しそうですし」だって?
楽しんでるのはこの変態だけだ!
「どうする、英。頼みの綱があのド天然だったのは運が悪かったなあ。」
「全くですね!」
「さて、じゃあ二人で楽しい続きをやろうか?」
「け、結構です!本当にもう僕いろいろ限界ですから!」
「大丈夫大丈夫。」
「何がですか?!」
「痛いのは初めだけだから。」
「やだやだやだ!無理!本当に無理です!」
「大丈夫だって。俺巧いから。」
何が?
何が巧いの?
「そういう問題じゃありません!!」
和海さんは苛立ちを隠そうともしない雑な口調で言い放つ。
「あーもう!お前少しうるさいぞ。雰囲気ぶち壊しじゃないか。」
「積極的に壊してるんです!そうじゃなきゃ何されるか分からないから!」
「何って……。それはな、まず尻に……。」
「わあーーーー!き、聞きたくない!!」
「そうかそうか、早く続きがしたいか。じゃあ早速……。」
「ちがーーう!!なんでそうなるんですか?!本当に嫌ですっんムッ!」
唇にまた、あの柔らかくて熱い感触が降ってきて、僕の言葉は潰える。
「ーーッ!……んっ……んぁっ……ちょっ……!ま、って……!」
胸が苦しい
体に力が入らない
こんなことされて嫌なはずなのに、体はぞくぞくして、なんだか気持ちいい……
……気持ちいい?
男にこんなことされて?
冷静に考えると、僕の今の思考はかなりまずいんじゃないだろうか……
目先の気持ちよさに惑わされて、肝心なことを忘れている
僕は男で、
今僕にキスをしている人も男だということ
「英。」
低い、艶っぽい声
人の心にじわりと染み込み、知らずのうちに征服してしまう、そんな声。
そんな声で僕の名前を呼ばないでほしい。
ただでさえ今の僕はまともに考えられていないのに、そんな甘い声で呼ばれたらころっと流されてしまう。
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