第2章

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松本さんはドアのところで振り返ると、にこっとして首を傾げた。 「はい、なんでしょう?」 「あの、本当に助けてください!和海さんをなんとかしてください!」 「なんとか……?よく分からないですけど、お二人とも楽しそうですし、私は邪魔しないようにしますね。では、また明日。」 そして松本さんは僕の制止虚しく、部屋から出ていってしまった。 すっかり忘れていたけど、松本さんも変人だった…… 「お二人とも楽しそうですし」だって? 楽しんでるのはこの変態だけだ! 「どうする、英。頼みの綱があのド天然だったのは運が悪かったなあ。」 「全くですね!」 「さて、じゃあ二人で楽しい続きをやろうか?」 「け、結構です!本当にもう僕いろいろ限界ですから!」 「大丈夫大丈夫。」 「何がですか?!」 「痛いのは初めだけだから。」 「やだやだやだ!無理!本当に無理です!」 「大丈夫だって。俺巧いから。」 何が? 何が巧いの? 「そういう問題じゃありません!!」 和海さんは苛立ちを隠そうともしない雑な口調で言い放つ。 「あーもう!お前少しうるさいぞ。雰囲気ぶち壊しじゃないか。」 「積極的に壊してるんです!そうじゃなきゃ何されるか分からないから!」 「何って……。それはな、まず尻に……。」 「わあーーーー!き、聞きたくない!!」 「そうかそうか、早く続きがしたいか。じゃあ早速……。」 「ちがーーう!!なんでそうなるんですか?!本当に嫌ですっんムッ!」 唇にまた、あの柔らかくて熱い感触が降ってきて、僕の言葉は潰える。 「ーーッ!……んっ……んぁっ……ちょっ……!ま、って……!」 胸が苦しい 体に力が入らない こんなことされて嫌なはずなのに、体はぞくぞくして、なんだか気持ちいい…… ……気持ちいい? 男にこんなことされて? 冷静に考えると、僕の今の思考はかなりまずいんじゃないだろうか…… 目先の気持ちよさに惑わされて、肝心なことを忘れている 僕は男で、 今僕にキスをしている人も男だということ 「英。」 低い、艶っぽい声 人の心にじわりと染み込み、知らずのうちに征服してしまう、そんな声。 そんな声で僕の名前を呼ばないでほしい。 ただでさえ今の僕はまともに考えられていないのに、そんな甘い声で呼ばれたらころっと流されてしまう。
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