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「ああ、でもさっきも言った通り、お前が柳苑寺を許すって言ってる限りは俺もあいつらに手を出さないから安心しろ。」
ちがう、そういうことじゃなくて……
「俺のものって……。」
「俺のものだろ?柳苑寺家から俺に所有権が移ったんだから。それに俺は……いや、それはまた今度にしよう。」
意味深なことを言って、和海さんは僕から離れる。
「とにかく、ここがお前の新しい居場所だ。柳苑寺に見離されたからって不安がる必要はない。お前にはちゃんと居場所があるんだからな。」
“居場所”
僕が今一番欲しかった言葉だ。
今日、僕は自分の居場所だと思っていたところから見捨てられ、根のない水草みたいにふらふらと漂う存在になった。
僕は認めてほしかった。
自分がいていい場所だと、そう認めてほしかったのだ。
だから和海さんの口から「ここがお前の新しい居場所だ」と言われ、僕は不覚にも鼻の奥がツンとしてしまった。
「和海さん……。」
和海さんは優しい笑顔で僕を見て言った。
「さて、英。続きをしようか。」
……一瞬で気分が台無しだ。
なんでこの人はちょっと感動する雰囲気を、こうも簡単に破壊するんだろう?
「しません。絶対にやりません。」
「ここまで煽っておいてそれはないだろう。」
「煽ってません!!」
「なに今さらいい子ぶってんだ。お前だって結構ノリノリだったくせに。」
「なッ?!そ、そんなことないです!!」
「もういい、寝る。」
和海さんはわざとらしいため息をつくと、ベッドに倒れ込んだ。
……ここ僕の部屋なんですけど……
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