第2章

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「寝るなら自分の部屋に帰ったらいいんじゃないですか?」 「なんで?」 「な、なんで?なんでって、普通そうでしょう。」 「だって一人で寝る気分じゃない。」 「そんなの僕は知りませんよ!」 和海さんはニヤッと笑うと、腕をベッドに投げ出した。 「はい、英。」 「なんですかその腕は。」 「寝ろ。」 「はい?!」 「選んでいいぞ。このまま素直に俺の言うことを聞いて寝るか、もしくはさっきの続きを一晩中やるか……。」 「よ、喜んで寝かせていただきます!」 僕は和海さんの気が変わらないうちに、急いで横になる。 なんでこんなひとに腕枕されなきゃいけないんだろう……。 心がしょっぱい……。 僕は和海さんに背を向けてため息をつきながら、念を押した。 「絶っっ対に変なことしないでくださいね。」 「分かった分かった。」 「絶対ですよ。」 「しつこい。あ、そうだ。」 「なんです?」 「悪かったなあ、初めてのキスが俺で。」 「は?!」 や、やっぱりばれてた? 「いやー、初めてが俺のキスじゃ、今後お前がキスに求める基準が高くなるな。」 「な、なに言ってるんですか!」 和海さんはクスクス笑いながら寝返りをうち、僕のことを後ろから抱き締めるような体勢になった。 背中から伝わる体温に、僕の心臓は早鐘みたいに騒がしくなる。 こんなにドキドキしていたら、きっと和海さんはまた僕をからかうに違いない。 そう思っていたのに、和海さんは何も言わなかった。 そのかわり僕をぎゅっと抱き寄せる。 「お前子ども体温だな。」 そうきたか。 「悪かったですね、体温が高くて!暑いなら離せばいいでしょう。」 「いや、ぽかぽかして気持ちいい……。」 和海さんはそう言ったきり喋らなくなり、間もなく、僕の耳元でスースーという寝息が聞こえてきた。 この人がよく分からない すごく大人に見えるのに、こうやって僕を抱いてすやすや眠るときは子どもみたいに思える 僕のことをからかって、小バカにして楽しんでて とんでもない変態のくせして それなのに 優しくて、あたたかくて…… 僕にはこの人がよく分からない。 でも背中にこの人の体温を感じて目を瞑ってる今、この時 僕は不思議と心地よかった。
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