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原和海はおもむろに立ち上がり、僕の前に立った。
六尺(約1.8メートル)はゆうにある。
それにがっしりしていて、まるで西洋人のような体格だ。
僕は怖くなりながらも原和海を見上げて挨拶をする。
「はじめまして、柳苑寺英陽です。」
原和海は何も答えずしばらく僕を見下ろしていたが、ぷっと笑い机に寄りかかった。
人の顔を見て笑うなんて失礼だ。
つい原和海を睨み付けてしまうと、彼は小馬鹿にした顔で言った。
「栗鼠の威嚇って感じだな。」
り、りす?!
とるに足らないってこと?!
唖然とする僕に、原和海は尋ねてくる。
「それで、通称は?どうせ身内ではそっちを使ってるんだろう?」
「は、英(はなぶさ)です……。」
「ああ、英陽で英ね。たしかにそんな感じの顔だな。じゃあ英、年は?」
「数えで十七になりました。」
「十七ね。もっと若く見えるな。まあいいだろう、その顔なら十分客がつく。」
きゃ、客?
驚いて聞き返そうとすると、原和海はニヤッと笑った。
「俺が肩代わりした柳苑寺家の借金がいくらか分かってるか?利子が膨れ上がって凄まじい額になってたんだぞ。」
「そ、それは……。」
「そんな借金を返すのに、女ふたりでぼちぼち稼いでも足りないからな。美少年は希少価値が高いから稼ぎもいい。お前の姉たちが体を売る金なんて雀の涙ほどだが、お前が客を取れば少しは借金返済も捗るさ。」
話を聞きながら、僕の頭のなかは真っ白になっていく。
覚悟を決めてここに来たつもりだったが、その覚悟が折れてしまいそうだった。
男の僕が客を取るってどういうこと?
男に体を売れということなのか?
原和海はにっこり笑って続ける。
「お前を買ったのはこの俺だ。どう使おうと俺の勝手だ。」
怖い
この人は情では動かない
本気で僕に体を売らせる気だ
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