〇〇まくりサンタ☆マサオミ

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〇〇まくりサンタ☆マサオミ

美しい月と星々が、 クリスマスイルミネーションの様に輝く寒空を、 僕は雪の結晶と共に舞う。 冬風が雲と共に鳥肌立つ頬を撫で、 鈴と風切り音が耳を紅蓮に凍らせる。 憧憬に満ちたトナカイのソリで飛ぶ僕、 夜久野聖臣(やくの・まさおみ)は、 日本全国のサンタクロースを束ねるサンタ長。 最年少でサンタ長になったので白髭は無く、 サンタらしくないと雪の精霊や冬将軍に囁かれるのだが、 今はサンタらしくトナカイのソリで飛行している。 欧米と違いクリスマス直後に大晦日を始め、 正月も十日戎も成人式も終えた睦月の夜空なのにだ。 2001年に新世紀と共に導入された、 角付懐中時計型空間転移装置トナカイくんにて、 サンタのプレゼント効率は爆発的に向上したが、 流石に全員が全員機械トナカイでテレポートは夢が無い。 こうして時代遅れの生物トナカイ型ソリを残し、 サンタと言う夢を守る者としての誇りを示し、 象徴的模範となる事こそサンタ長の責任である。 「でもマサシゲ爺さんがサンタ長だった頃は、 全員こうしてプレゼントして回ってたんだよなあ。 昔のサンタは凄いなあ~」 まるで団塊の世代に負い目を感じる、 ゆとり世代の様な事を呟きつつ、さとり世代の為に飛んでいると、 前方の雲を駆ける動物の群れが見えた。 「まさか僕と同じトナカイのソリに乗る懐古的同業者? いや違う!トナカイでなく馬だ!」 馬達は固体化した足元の空間を踏み鳴らし、 夜空には不似合いな蹄鉄の音を響かせる。 上には革鎧や羽根兜に身を包んだ、 北欧風の戦士達が槍を片手に跨がっている。 サンタとは一線を画す勇ましい軍団、 先頭には僕よりもサンタらしい、 白い長髪をマントと共に靡かせる老人が見える。 「オーディン様!居ました! 葦原中津国(日本)サンタ長の夜久野聖臣です!」 「おぉ見付けたか!止まれ」 北欧軍団は振り向くと、 僕のトナカイ型ソリを囲む様に立ち止まった。 「なっ!何だあなた達は?」 「わしは北欧神話最高神オーディン! おぬしらサンタクロースの起源じゃ」 そう言えば先代サンタ長マサシゲ爺さんから聞いた事が有る。 サンタのモデルとされる聖ニコラウス以前にも、 僕達のルーツが有ると。
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