Swap

2/24
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 コミュニティアプリケーションのRoom Shareで私はカイと喋っていた。ふかふかのソファとかクロスを敷いたテーブルとか熊のぬいぐるみとか柔らかいクッションとか、明るくてごてごてと溢れた部屋でカイは酷くだらしなく大きなソファに寝込んでぼそぼそと言葉を紡いでいた。私は一人掛けのソファに姿勢正しく座っている。 「マイホームってそんなに憧れるものかな」古いタイプのお父さんならまだしも、とカイは断る。「パフォーマンスが悪いんだよ。コストも時間もエネルギも。規格化されたマンションでの集中管理はそれでも高いカスタマイズ性があるしプライバシィもセキュリティも保障される。最適なモデルだと思うよ。多くの人間は家が持つべき必要条件は全て満たしていると思う。多くない人間は、化石だ。化石って言い方化石かな」  それがカイの主張だった。カイは面倒臭そうに私に顔を向けた。 「フィーはこんなトリッキィでファンシィな部屋を用意しているからそうは思っていないかもしれないけど。でも、いや、いいや」  カイは欠伸と共に顔を上に向けた。私はカイが何を言わないでおいたのかわからなかった。だからカイに「何」と圧した。カイは口を斜めにしただけで答えなかった。仕方がないから私はカイが寝転ぶソファに向かう。カイのお腹のところに座ってカイに持たれた。元々ソファには私も座っていた。少し立った隙にカイがだらしなくなったのだ。 「こんな圧力簡単に逃げられる」 「カイはそんな面倒臭いことしないでしょ」 「そうだな。天秤はまだ傾かない。天秤って知ってるか? 超アナログな相対的で融通の利かない計量装置」 「知ってるよ。学校で触った」普通の計りも実際は相対的だ、とも思った。 「嘘だろ。いつの時代の学校だよ。ありえない。天秤なんてどこの政府も認可してないだろ。使い道ないぞ」  カイと同じ、現代の最先端の考えでカリキュラムが組まれた学校だったけど、カイはその講義には出なかったのかもしれない。 「で、何? 私の部屋に何か意見あるの?」 「同じだよ。寧ろ下方互換」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!