夏の日の、帰還

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一人思案に耽っていると、俺よりも少し背が低い、どちらかというと小柄な少女が近付いてきた。 目鼻立ちは整っていて、装いにはどこか神聖な趣きがある。 あと、髪が白い。 「そうですね、ここ最近は夢のようなひと時でした。それこそ、悪夢がほとんどだったと言っても過言ではないほどに」 「そうだな」 聞こえていたのだろうか。 とりあえず俺は適当に相槌を打つ。 「それでも、今こうして同じひと時を過ごせている。それだけでも最後は幾分か報われた夢だったのかもしれません」 少し間を置いて、少女はどこか儚げな表情を浮かべながら続ける。 「もう、行ってしまわれるのですね」 少女の言葉を皮切りに周囲はしんと静まり返り、さっきまで高らかに笑っていた大男までもが黙り込む。 周りを囲っている一人一人が俺の言葉を待ってるような気がした。 おそらく夢の終わりが近いのだろう。 円満な夢となるように努めなくては。 何故かそんな気がした。 「そんなに悲しそうな顔をするなよ。また会えるさ、きっと。そんな気がするんだ」 おそらく、この場での対応はこれで合っているはずだ。 現に目の前の少女は心なしかさっきよりも穏やかな表情を浮かべている、ような気がする。 内心ほっとしたのも束の間、突如として後方の少し離れたところにある扉が軋みだした。 そろそろか。 「じゃあ、俺もう行くわ」 扉に向かって歩みを進める。 おそらく、あれが夢の終着点。 扉はまるで意思を持っているかのようにひとりでに、そして徐に開きだす。 俺はふと扉の前で歩みを止めた。 何故かは分からないが、言いようのない名残惜しさに襲われた気がした。 もう一声くらい掛けておこう。 「元気でな」 ふっ、決まった。 そう思うよりも早く、世界は再び暗転した。
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